ドキュメンタル

GENFU2007-06-14

「マルメロの陽光」

もそうだった。


僕は 昨日、今日と、
ミース・ファン・デル・ローエ
という建築家のドキュメンタリーを観た。
仏語と英語が耳に交じる。
心地の良いジャズ、BGM。

映画を2回続けて観たのは初めてだった。

もう相当に歳をくってしまったのだろうか・・僕は最近ドキュメンタリーが一番面白い。


ミースは、現代建築の最初期の巨匠の一人だ。
ガラス張りの高層ビル。
それを手掛けたはじめた建築家だ。
彼の作品の完成予想図をみて、融資先の銀行員は言ったそうだ。

「これの完成形はどうなるんだ?」

当時のビルの主流は、ビルの所有会社のイメージを前面に出すため、装飾がちりばめられていた。
ビルの構造が見て分かる長方形の完成予想図を、骨組みと勘違いしたらしい。
彼の作品には、既存の素材しか使われていない。
素材のカタチも大きさも、他のビルとほとんど変わらない。
それでも彼の建築が他と一線を画するのは、都市生活の中での空間への配慮であった。

「Try again.」

彼がイリノイ工科大学で生徒によくいっていた言葉だ。
彼はこう考えていた。
「新しい状況に対し、問題に取り組む唯一の方法は、
避けたり、過去を懐かしむことではなく、
本気で手直しをし、考え直すことだ。」

当たり前のことに思えるかもしれない。
でも本当にできている人がいるだろうか。
重要なのは考えることではないのだ。
考え直すことだ。
そして手直しをすることだ。
繰り返し。

「実際に経験したことからしか解決は生まれない。
頭で考えているだけでは駄目だ。
何度も手直ししながら、
いくつもの選択肢の中から可能性を一つずつ削除していく。
うまくいけば満足のいく解決策が一つか二つ残ります。」

あるプロジェクトでホテルに缶詰になっている時、
ミースは何時間も窓の外を眺めていることがあった。
しびれをきらした孫が、
「何もしないなら帰りませんか?」
といったところ、彼はこう答えた。

「私は働いているんだ。」

僕が言いたいのはそういうことだ。

これは「原風」2号の表紙です。